<私たちは自分の弱さを過小評価する傾向がある。(2)>

 凶悪犯罪について考えてみましょう。

 ニュースを見ると、毎日のように凶悪な犯罪が起こっていることが報道されます。
 本当にひどいニュースに接すると、被害者のことを思って心が痛むとともに、犯人に対する怒りがわきあがってきます。
 なんてひどいことをするとんでもないやつなんだ。ゆるせない。人間じゃない。あんなやつは死刑だと心の中で叫ぶかも知れません。

 ひどい事件があると、私もよくそんなふうに思っていました。
 でも最近は少し考え方が変わってきました。

 もし自分が、その犯人と同じ境遇、同じ環境におかれたら、絶対に同じような犯罪を犯さないと言い切れるだろうか。と考えるのです。

 誰にでも、弱さがあります。
 法律にひっかかるような罪は犯していないかも知れませんが、神様の目には罪とされるようなことを、誰でも、毎日たくさんしてしまっているのだと思うのです。
 誰にでも、おちいりやすい落とし穴がたくさんあるのです。
 自分には、自分でも知らないような弱さもあるかも知れません。

 凶悪犯と同じ境遇、同じ環境に立たされた時に、まったく同じ犯罪を犯すわけではないかも知れませんが、何らかの重大犯罪を犯してしまう人は意外に多いのではないかと思うのです。

 人間の理性というものは、私たちが思っているほど頼りになるものではなくて、衝動や本能がそれに勝ってしまって、非理性的な行動に走ることが、少なくないのではないかと思うのです。

 私たちは、自分の弱さを過小評価するものなのだと思います。