<こんな「ピンピンコロリ」はいかがですか。>

 (その3)と(その4)でがんで亡くなる場合の平均的な経過についてご紹介しました。
 がんが進行してきても、亡くなる1〜3か月ぐらい前までは普通に生活できる場合が多いです。趣味や旅行を楽しんだりすることも普通にできます。
 余命が1〜3か月以内となってくると体力が落ちてきて、だんだんとできることが限られてきます。行動できる範囲が徐々に狭まり、人に助けてもらわないといけないような場面も少しずつ増えてきます。
 次第に食事がとれなくなってきて、衰弱が進んで、徐々に枯れるように最期を迎えるのです。

 (その2)では、ピンピンコロリを望む人が多くても、実際にはそれはほとんど実現しないと書きました。

 がんの末期は、ピンピンコロリとは少し違います。
 ですが、少なくとも亡くなる3か月前までは普通の生活ができて、その後、比較的急に体力が低下して最期を迎えるわけで、ピンピン元気だった方が、3か月ほどでコロリと亡くなるということであれば、けっこうピンピンコロリのイメージに近い亡くなり方だと思うのです。

 (その2)では、ピンピンコロリは遺族にとっては突然過ぎて、つらい別れだと書きました。
 ですが、がんの末期だと、症状が徐々に進みます。この先どんなふうに病状が進んでいくかとか、余命がどのくらいかとかについてはある程度予測できます。
 本人にとっても、家族にとっても、心の準備をする時間があるわけです。
 愛する人と死に別れるのは、本当につらい、苦しいことではあります。ですが、がんの末期であれば、その時までに互いに十分に気持ちを伝え合うことができます。準備をして、覚悟をすることができます。良いものを家族に最大限に残して去っていくことができます。自分で自分の人生の物語を思うように完成させることができるのです。
 がんの末期は、本人にとっても、家族にとっても、本物のピンピンコロリよりはずっといい亡くなり方ではないかと思うのです。