<がんで亡くなるということ(2)>

 平均的ながん患者さんの経過の続きです。

 がんになると次第に体力が落ちてくるわけですが、亡くなる1〜3か月ぐらい前までは仕事もできる場合が多いです。ふだん通りの生活もできることが多いです。最近亡くなった樹木希林さんの生き方を見られても、よくわかると思います。

 次第に食欲が低下しますが、亡くなる当日でも、ほんのわずかかも知れませんが、食べたり飲んだりできる場合もけっこうあります。

 がんの末期になると、痛み、息苦しさ、咳、はきけなどのつらい症状が起こることがあるのですが、緩和医療の進歩のおかげでこれらの症状はかなり和らぎます。症状がつらくて、夜眠れないというようなことは、きちんと緩和治療をしていれば、普通は起こりません。

 がんの末期で死期が迫っているような時でも、最後の最後まで意識がはっきりしていることが少なくないです。なので、愛する家族や親しい人といろいろな話ができます。大切なメッセージを残すこともできます。

 私が最近担当した在宅看取りをした患者さんです。
 60代の女性だったのですが、消化管の悪性腫瘍の末期の方でした。在宅で腹水を抜いたり、痛みに対してモルヒネの持続皮下注射を行ったりしました。痛みもなく穏やかに過ごされていました。亡くなる数時間前から、ご主人が夫婦の思い出の歌を歌ったりされていたそうです。奥さんはそれを笑顔で聞いておられ、時々歌をいっしょに口ずさんだりされました。やがて意識が遠のいて、呼吸が止まったそうです。まるで眠っているだけのように見える穏やかなお顔でした。

 がんと言うと、「死」を意味するこわい病気という意識が強いかも知れません。
 でも、上記のようながんの患者さんの最期の様子を読まれると、どう感じられますか。
 人は誰でもいつか最期を迎えます。誰でもいつかは死ぬということを考えると、私自身の死に方としては、がんという病気で死ぬのは、悪くない、いや、むしろ好ましいと思っています。