<がんで亡くなるということ(1)>

 大ざっぱに言うと、日本人の半分は一生のうちに一度はがんにかかり、日本人の3分の1はがんで亡くなります。

 私は尼崎医療生協病院の緩和ケア科で1年間勉強させていただきました。
 尼崎医療生協病院の周りには、当時二つの県立病院や関西ろうさい病院などの大きい病院がありました。大きい病院にはがんの患者さんもたくさんかかっています。これらの病院ではがんに対して、手術や抗癌剤治療や放射線治療などが行われます。

 がんにはいろいろな臓器由来のものがあり、患者さんの間の個人差も大きいのですが、平均的な患者さんの経過は以下のようなものです。
 がんと診断されて、手術、抗癌剤治療、放射線治療などの治療が行われます。最初のうちは治療によってがんは小さくなるのですが、次第に治療による効果が小さくなっていき、やがてがんは増大していきます。どんな治療をしても、がんは悪くなる一方という段階になると、大きい病院ではこれ以上の治療は意味がないということで、緩和ケア病棟に紹介されることとなります。

 緩和ケア病棟というところには、このようにがんの中でも最末期の患者さんが入ってこられるわけです。

 私が、緩和ケア病棟で働いていた時に気づいたこと、感じたことがいくつかあるわけですが、その一つは、がんは高齢者の病気であるということです。
 緩和ケア病棟に入院してこられる患者さんはたいてい70〜90代です。時には40代とか、50代のがんの末期の方も入院してこられるのですが、かなり少数派です。がんとは言っても、平均寿命以上に長生きされる方も多いのです。がんではあっても、天寿を全うされる方も多いということです。